ヴィスコンティ・ブレラ・ブランビラ版/The Visconti Brera-Brambilla

1463年、フランチェスコ・スフォルツァ の命を受け
ボニファチオ・ベンボ(Bonifacio Bembo1447 -1477年活躍)
によって描かれたタロット(Wikipediaより)
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このデッキは現存する原版を忠実に再現した48枚のみのセットです。

さて、こちらのTarocchi、「フランチェスコ・スフォルツァ」の命によるものとのことですが、、誰でしたっけ?

では、現存する最古のタロット、ヴィスコンティ版は誰の命で作られましたっけ?
そう、ミラノ第三代侯爵フィリッポ・マリア・ヴィスコンティでした。
そのフィリッポの娘婿が、フランチェスコ・スフォルツァでございます。

フラシスコはヴィスコンティ家に代々使える傭兵の氏族でしたが、その勇敢な活躍ぶりによって、フィリッポから「力あるもの=スフォルツァ」の称号を与えられ、娘婿に抜擢。第四代侯爵にのし上がった男。

フィリッポは1447年、57歳で崩御。その後、フラシスコ・スフォルツァがすんなり後継者へと移行できたわけではなかったこと等、この辺の下りは山川出版社『タロットの歴史』p.26に刻まれております。。

このヴィスコンティ・スフォルツァ一族が立役者となりまして、タロット文化が世に花開くわけではございます。

この世には、ヴィスコンティ版と呼ばれるタロットが3種現存している次第です。

ひとつは、ヴィスコンティ版ベルガモ・パック。→かなり省略形の呼び方。「ピエールポント・モルガン・ベルガモ・パック」が正式名称?というか、NYのピエールポント・モルガン美術館と伊ベルガモ美術館の2つで現物が保管されていますよという呼称を持っておりますね。

 

二つめは、ヴィスコンティ版キャリー・イエール・パック。→「キャリーさん所有でしたが、米コネチカット州イエール大学の図書館に寄贈されました」という意味の呼称。もしくは、当初復刻作品を販売したモドローネ氏にちなんで「ヴィスコンティ・ディ・モドローネ・パック」とも呼ばれています。

 

そしてこちらが三つめ、ヴィスコンティ版ブレラ・ブランビラ・パック。→「ブレラさん所有でしたが、伊ミラノのブランビラ美術館に寄贈されました」という意味の呼称。
ヴィスコンティ・ブレラ版でも、ブランビラ・パックでも解ればええでしょう。
はい、それでは、ブランビラ版のお箱のふたを開けてみましょう☆彡
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メイカーさんが一点一点手作業でほどこして下さる熱々のワックスシーリングがつや光りしています。
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シーリング入りの封印をはずして全開放。箱の底に小さな注意書き=ハンドメイド作品につき、若干の反り、かすれ、よごれがあることがございます。。ご理解頂ければ幸いです。
当社取扱い中のヴィスコンティ・タロット・イエール版/Tarocchi Visconti di Modrone をお買い物求め頂いたことがございます方には、同様の紙質・感触でございますことをお伝えしております。
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絵札総数48枚中、貴重な2枚の大アルカナ! 神々しい! 死守です。
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「皇帝」カタジロワシの紋章。これがキーでもある。

Michael Dummet(マイケル・ダメット)著「The Viscnti-Sforza TAROT CARDS」によれば

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フランチェスコ・スフォルツァが公位を継承できたのは、ロンバルディーの都市を一つ、また一つと攻略し、最終的に、1450年にようやく、ミラノの降伏を受け入れた後のことです。公位は、世襲によって受け継がれるべきものであり、もちろん、フランチェスコ・スフォルツァは、正当な公位継承権を持たなかったのですが。彼は、自らが、ヴィスコンティによる統治の正当な継承者であると思わせたいと躍起になっていました。ですから、ヴィスコンティ家の紋章やモットー(小アルカナでキーになる)なども全て、自らのものとして継承したのです。スフォルツァ家の独特の紋章である三つの繋がった輪と共に、ヴィスコンティ家の紋章がいくつも描かれていることこそ、ヴィスコンティ・スフォルツァ版がフランチェスコのために作られたことを示す決定的な証拠となるのです。三つの輪は、月桂樹や椰子の葉(ヴィスコンティ家の紋章)と共に、公爵の冠と関連付けられ、「皇帝」や「女帝」の装束に描かれています。フランチェスコが、自ら公位を継承する以前に、そのような関連付けを容認するとは考えられません。したがって、ヴィスコンティ・スフォルツァ・パックが描かれたのは、1450年以降と考えて間違いありません。

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なるほど、絵柄のパーツに様々な情報、ヒントが満載なのですね。
この後、マルセイユ版の絵柄にも取り入れられていく「黒いカタジロワシ」。
下右)当時流行した寓意画さながらの「運命の輪を回す女神」。ベルガモ版、CY版と大変似ています。
下左)「皇帝」表情を動物的にした風刺画になっているのかもしれません。他の人物札とは一線を画するタッチです。
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絵の具の金には、エナメルとかラメのような光沢はありませんので、一瞬「黄色?」に感じられましたが、いやはやどうしてどうして「金色」です。当時のテンペラ画、さぞかし豪華だったことでしょう。
※ご購入はAmazon.co.jpで:販売価格は2020年秋以降改訂予定です。
謎めく小アルカナ
タロットの不思議の一つに、小アルカナ=数カードの存在があります。
トランプとは絶対的に異なる、スートとその配置・・・トランプのように決して画一的ではないその並びに、「そもそもタロットとは何なのか?」のカギがあるはずです。
M・ダメットも提唱しているように「これがゲームのためのものなら、40枚もあるのだから、数を振るのは必然でしょう」。なるほど、いや参りました。確かに、こんな複雑なタロットの小アルカナで卓上ゲームは至難ですね。いちいち「えっとこれって、9?10?」数えているわけにいかないでしょう。ゲームであれば。
現存するマルセイユ版数札にも、数値は振られていません。数はもちろん、重要なのだけれども、算用数字の数値ではないんでしょうね、純粋に「何がいくつあるのか」が重要で。
さあ、行ってみましょう。ヴィスコンティ・ブレラ・ブランビラ版小アルカナ、タロットの謎解きの世界へ!
まず、解りやすい「剣」。トランプのスペード。
ACEにはヴィスコンティ家のモットーが。
「A bon droyt」「善は権利である」「法に従え」と言うもの、ペトラルカ(Petrarch イタリアの詩人1304-74)によってミラノの第一代公爵であるジャイアン・ガレアゾォ・ヴィスコンティに提言されたものであることがわかっています。
(弊社ヴィスコンティ版オリジナル解説書より)
ベルガモ版、キャリー・イエール版の「剣」は婉曲していませんでしたが、ここからマルセイユ版にも受け継がれた「剣の婉曲」が始まった模様。剣の取っ手が下、刃が上を向いています。
しなやかな剣、美しいですね。「自然は直線を嫌う」という慣用句があります。
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剣/SwordsのAceにはヴィスコンティ一族のモットー「善は権利である」「法に従え」の文言がたなびくリボンに印字されている模様。

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WAND/棒のAceにもございます。棒というより、槍で、これはベルガモ版、CY版同様。
取っ手が上で、棒の先が下向きです。「槍」V.S.「剣」と対照性が際立ちます。正逆の扱いはどうなるのか?
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槍の人物札は3枚のみ現存。王、女王、騎士らは同じ柄のお召し物。一族の皆さんなのでしょうか。青いお着物、金箔を背景に美しいこと!
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現存する12枚の槍/Wands

※10の札は最後にまとめています

現存する10枚の剣/Swords

この湾曲したサーベルのような剣は、ヴィスコンティ版の中でこのブランビア・パックの最大の特徴でしょう。

美しい背景は銀色に染められおり、小花模様のモティーフが散りばめられています。
上下の向きを明確にするものがほぼないに等しく、箱に入っていたままの上下を維持して掲載しております。多くの絵札の上部にピンホールが見られますが、上下両方ともに穴が空いている絵札複数見られます。
残念ながら、この剣の札の人物札は欠損しています。
占いで「剣の札」が出るならば、、
ノブレのマルセイユ版メイカーによれば剣は「政治、闘争、文化的主導者」を示すもの。
なかなかしっかりした造りの絵札ですので、どうぞ皆様もテーブルに広げて、貴族のように占術の悦に、いかがでしょうか?
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現存する11枚の杯(さかずき)/Cups

さあ、「杯(さかずき)」です。何故?ACEではなく、4に一族のモットーが。
4から始まる、何かがあるのか。4 of Cups=Ace of Swords/Wands という等価性があるのか? この札は重要そう。
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5ofCupsについては5=4+1というイメージになっている。となれば、6=4+2
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なるほど、だから7=6+1  8=6+2  9=6+3 というイメージが成立するのですね。
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杯の10=9+1 というイメージだが、貨幣と槍は10=5+5。。画一的ではない。このスートのシンボルの並び方がトランプと決定的に違うところ、タロットの存在意義のにじみ出るところでしょう。

現存する10枚の貨幣/Coins

「貨幣」は実際の硬貨のリアリティある質感。またまた同一スートの人々のお召し物も同一。ベルガモ版、CY版を経てヴァージョンアップを感じさせられます。黄金の毛皮のアーミンを羽織っているかのよう。お帽子、当世風のタイツの可愛いこと。
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ちなみに貨幣の数札に一族のモットーが見られない。ベルガモ版、CY版には複数見られましたが。モットーを入れる絵札が時を経て絞り込まれた模様。

各スートの10及

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にしても、いや美しいですね、美しすぎる。世界で最も美しい小アルカナと言っても過言ではなく、またマルセイユ版に引き継がれた「数の神秘」、引き継がれなかった部分、その所以は?
いわゆる数秘の原点としても、注目を集め出したこのデッキでございます。
筆者ももう何度も何度も繰り返し、各絵札をチェック&チェックでございます。
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すべての画像はインターネットタロット美術館へ移動しております☆彡

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