タロット代表的な3種の系統

 ひとことで「タロット」と言っても、商品数としてになりますが、そのスタイルは数百種にものぼるタロットが巷には出回っています。タロットの絵柄やシンボリズムを学ぶとき、まずは大きく3系統のタロットを理解しておくことをお勧めいたします。その3系統とは、ヴィスコンティ系、マルセイユ系、ウェイト系です。より細かく系統立てられるケースもあり、またさらに枝葉が分岐するなど、専門家により諸説が広がるところでもありますが、主にアメリカで支持されている研究者による分類を参考に、わかりやすくごく簡潔に記します。

 ヴィスコンティ系のタロットは、ヴィスコンティ版を代表とする1300~1400年代の中央ヨーロッパ(現フランス、イタリア方面)発祥のもの。王侯貴族の依頼を受けた画家の手描きによるテンペラ画が多く、現存しているものは数種に限られており、札番号やタイトル表記もなく、どれもスタンダードなタロットの「セット(※)」としては未完成の状態です。キリスト教的なシンボリズムや教義が散りばめられており、教養人たちが絵解きをして楽しむもの、まじない札などでもありました。

※現在の標準的(スタンダード)なタロットは、大アルカナ22枚と小アルカナ56枚、総計78枚でワンセットとされています。

 
実際に現存しているものも少なく、流通しているのは復刻版であり、こちらを実践的に占術鑑定に使用されている方は少ないと思われますが、当方では2003年以来、定期的に講座を開催しております。

 マルセイユ系のタロットは、マルセイユ版を代表とする1600年代中盤から出回りだした木版画による絵札で、版木の作成にあたってはヴィスコンティ版を参考にしたものとみなされています。同じ版木がくり返し使用されることで、札番号とタイトル表記含めタロット一定のセットが確立。印刷物として量産され庶民の間にも広く普及し、ゲーム、賭博、占いの道具としてもてはやされました。版画の細部に渡ってはカードメイカー(カードの製造業者)それぞれの独自性が見うけられ、版木にもいくつかのバージョンがあったことがうかがえます。
1700~1800年代の研究家たちによりマルセイユ版の亜種や変種が豊富に作成され、さらに創作を加えた、欧米では「ラグジュアリー版」と呼ばれるタイプが現在でも作成され続けており、この系統のタロットは2~3百種にのぼるかと推定されます。


ドーパーニュ通りの工場:、1861年(キャンバスに油彩)コーニス、V.(19世紀)
マルセイユ、フランス、フランス語

※ドーバーニュ通り(プロヴァンス・オシタン:ラーチェラ・ドーバーニャ)はマルセイユの1区と6区に位置するマルセイユの道路。

ウェイト系のタロットは、アーサー・エドワード・ウェイトにより1909年に刊行されたウェイト版、それをアレンジした現代タロットで、20世紀以降今日も続々とプロデュースされており、大多数がこの系統に属します。
ウェイト版は、ヴィスコンティ版とマルセイユ版のスタイルを踏襲しながら、古代文明から宗教、神秘思想、心理学の領域で扱われる普遍的なシンボルが豊富に取り入れられ、その計算し尽くされた色彩、構図が世界中で愛好されるに至ります。現在出回っているタロットの多くがこの系統で、事実上ウェイト版がタロットの標準(スタンダード)の地位を獲得しています。
※ただし、マルセイユ版をアレンジした現代版も多数輩出されている。絵札の配列が8=正義、11=力であれば、マルセイユ系統のタロットとみなす傾向だが、まあ札の数値だけで判断できることではあるまいかと。ウェイト版とマルセイユ版をミックスさせたもの、そこから派生し、独創的なイメージの現代版も数多く作られ、もうほぼこれタロットじゃあないでしょう的なカードセットもあるのが現実。

手前みそながら「タロットの歴史」に記載した筆者のことばをかみしめて頂きたい!
各3系統のタロットは、それぞれDNAが異なるようなものなのです。

3つの系統それぞれを代表するヴィスコンティ版、マルセイユ版、ウェイト版は、作成された経緯も目的も異なり、人類史にたとえてみれば、私たち現代人のDNAがネアンデルタール人や北京原人とはすでに異なっているようなところで、それぞれDNAが違うのです。しかし確かなことは、ヴィスコンティ版がマルセイユ版へ、そしてウェイト版へと派生を重ね、枝葉を広げ続けているということ。

Amazon売れ筋タロットの歴史関連書籍

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です